先日、母校である杉野服飾大学の ジャーナルすぎ にて
私はいま、というページを書かせて頂きました!!
ご興味ある方はぜひご覧になってください(^ ^)♪
以下に内容を載せさせて頂きます。
同窓生の皆様
諸先輩方が寄稿される中、私のような若輩者がこのような機会を頂けたことに
感謝いたします。ありがとうございます。
私は短期大学部を卒業後、埼玉県にある丸縫いの縫製工場に就職しました。
この工場で実施されていた、一着を丸々ひとりで縫い上げるという生産方法は一見非効率に思われますが
小ロット生産には意外と向いている面もあります。
何よりも、それまで数ヶ月かけて一着を仕上げていた私にとって大変勉強になりました。
その後パタンナー、舞台衣装制作、百貨店販売など8回の転職を繰り返し、現在はオーダースーツを出張販売する会社を細々と経営しております。
主なお客様は生命保険営業をされる男性、女性の方です。
地域は東京を主に大阪、名古屋、埼玉にも伺わせて頂いております。
わたしはオーダースーツを出張販売するにあたり
「いいものを永く大切に」という言葉を掲げており
この言葉は正に在学中に訪れた研修旅行先での経験が基になっています。
私の選択したアパレルクリーションコース(工業用パターンでの服作りを学ぶコース)の生徒は
他のコースの生徒と別れて岐阜県にある機屋さん(生地を織る業者さん)や
仕上げ屋さん(織り上がった生地に染色や起毛などの加工をする業者さん)の見学をしました。
工場内は暑くてムシムシして、鼻を突く強い薬品の匂いが充満していて、、、
とても⻑く居られる場所ではありませんでした。
そんな環境の中で、眉間にシワを寄せながらも淡々と作業をされる職人さんの姿が今でも目に浮かびます。
このとき、すっかり自分の中から「誰か」が布を生産しているという事実が、すっかり抜けていることに気づきました。
日々着用する洋服も、課題制作に使う布地も、絶対に誰かが生地を生産していたはずです。
それに、それまでの授業で散々ウールやシルクなどの素材がどうやって布になっているのか?
お授業で教わって知っていたにもかかわらず、
実際に生産する人々を目にするまで学んできたことと事実が結びつきませんでした。
この研修旅行での体験で、今後の課題制作では絶対に布を無駄にするものか!と強く思わされました。
しかしその後、先述した様に縫製工場に就職した私は衝撃を受けます。
なんと、効率を最大限に求める量産工場であっても
(生地を無駄にしない最大限の効率化が図られているはずの量産工場であっても)
毎日多くの生地が廃棄されていたのです。
その後、パタンナーとしてお仕事をさせて頂く中で、
グレーダーさん(サイズ展開をするお仕事の方)や
マーカーさん(裁断する際の効率的な型紙の並べ方を指示するお仕事の方)とも関わることがありましたが、
曲線だらけの洋服で生地の廃棄をゼロにすることは不可能、
ましてや柄(特に大柄や横線の入る柄)がある生地になれば柄合わせがあり、
同時に何着分も裁断する大量生産では生地を破棄しないようにすることよりも全体の効率化の方が優先されます。
落ち着いて考えれば当たり前のことなのですが、
どうにも当時の私には受け入れ難くてモヤモヤした気持ちがなかなか抜けませんでした。
現在取り扱うオーダースーツも同様に、多くの生地を縫製工場では毎日廃棄せざるを得ない状況に変わりはありません。
『生地を廃棄しなければならないのが必須ならば、出てしまった生地をいかに再利用するか?を考えよう!』
と思い立ち、2018年は大阪にあるデザイン学校さんとチームを組み、何か出来ないものかと頭を捻りました。
が、、、ほとんどが黑や紺で微妙に色も形も異なるウールの端切れはなかなか使い道が見つかりません。
(もしこちらをご覧になられた方の中で良いアイディアをお持ちの方がいらっしゃいましたら是非ご連絡ください!)
また、「いいものを永く大切に」と言うからには「お直し」や「お手入れ」についても力を入れています。
私の仕事は出張でオーダースーツのご注文を承り、工場へ発注し、お客様へお届けすることです。
しかし、仕上がったスーツを受け取って終わらないのがお洋服との付き合いです。
どなたもご経験があると思いますが、お洋服を毎日着ていると、どこかがほつれたり破れたり、何かしらのトラブルが発生します。
できることならば、仕上がったときのような生地の艶、アイロンで整えられた形のまま着用したいものです。
しかし、そうするのもなかなか難しいのが現実です。
ただ驚くのは、ボタン付けや縫い目のほつれ、股が避け、、、少し直せばすぐにでも着れるような状態でも「捨てるしいかないですか?」と訪ねて来られるお客様が少なくありません。
そんなとき、一年生の授業で何度も先生に突き返された部分縫い、、、あのとき身に付けた手縫いの技術が大変役に立ちます。
その場で5分もかからずボタン付けやまつり縫いのほつれなどを直して差し上げると「すごーい!」と、甚く感動されます。
なので、出張販売先では私の姿を見かて、お直しの必要なお洋服をお持ちになられる方が多くいらっしゃいます。
学生時代は、なかなか合格を頂けずに悔しい思いをしたこともありましたが先生方に叩き込んで頂いた基礎が今も私の中に息づいています。
洋服に限らず、名前を入れるなど大量生産されたものではない、
自分オリジナルのものを揃える傾向が近年更に強まっていると感じます。
大手スーツメーカーやアパレル各社がオーダースーツの新ブランドを続々と発表し、店舗がどんどん増えています
これは私のような零細企業にとっては大きな目で見た時に追い風であり、大変有り難いことです。
理想をすぐに実現するには力が足りず、もがくことばかりですが今後も杉野で培った学びを基に事業を進めていきたいと考えております。
またいつかご報告させてください。
ありがとうございました。
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